| Q.1 |
今回の測定でなぜ胃がんのリスクがわかるのですか?
|
| A.1 |
胃の粘膜の萎縮(老化)が進んだいわゆる「萎縮性胃炎」では胃がんが発生しやすいことが知られています。胃がんハイリスク検診では、萎縮性胃炎、胃がんの発生に関与するといわれるヘリコバクターピロリへの抗体と、萎縮性胃炎のマーカーである血清ペプシノゲンを測定することによって、萎縮性胃炎にいたるリスク、胃がんになるリスクが判定されます。 |
|
| Q.2 |
ペプシノゲンとはなんですか?
|
| A.2 |
ペプシノゲンは胃の細胞から分泌される消化酵素ペプシンの前駆体(もと)で、PGIと PGIIに大別されます。 PGIは主に胃の胃酸を分泌する領域(胃底線領域)から、PGIIは胃全体から分泌され、分泌される範囲と量が異なるため、両方の値を測定することで胃の粘膜がどのような状態か推測できます。萎縮性胃炎ではPGIとI/II比が低下します。 |
|
| Q.3 |
ピロリ菌にはどうやって感染するのですか?感染の頻度はどれくらいですか?
|
| A.3 |
本菌の感染経路は不明ですが、経口感染すると考えられています。感染時期は小児期と考えられ、保菌している親との濃密な接触(離乳食の口移しなど)、あるいは糞便に汚染された水・食品を介した感染経路が有力視されています。現在では公衆衛生管理の向上により、保菌者が年々減ってきています。東京都のある職場の40歳から59歳の人に行われた検査ではピロリ抗体陽性者はおおよそ二人に一人でした。10代、20代では保菌率はさらに低く10-15%程度と思われます。 |
|
| Q.4 |
各群の胃がん発見率はどのくらいでしょうか?
|
| A.4 |
「胃がんハイリスク検診」受診後の精密検査では、B群で0.15%程度、C・D群では2%程度の胃がんが発見されるとの報告が見られています。検診後の精密検査の必要性について区民の方への説明をお願いします。
| |
A群 |
B群 |
C群 |
D群 |
| 胃がん発見率 |
0% |
0.15%~0.17% |
1.89%~2.38% |
出典:三木一正 第3次対がん総合戦略研究事業 胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジーに関する研究(厚生労働省)
|
|
| Q.5 |
検査後経過観察すると、A群からD群それぞれからどれくらいの胃がんが発生してくるのでしょうか?
|
| A.5 |
各群の1年間の発生頻度は以下のとおりです。たとえばC群ですと、1年で400人にひとり、10年の間ではおおよそ40人にひとりが胃がんを発生してくると考えられ、胃がん発生のリスクは「高い」と考えられます。D群に関しては10年間で8人にひとりとなります。ただし、このデータは対象が48-49歳を対象とした報告ですので、高齢者ではさらに発生頻度は高いと考えられます。
B群からD群の方に関しては、検査間隔の目安を参考に、「胃がんハイリスク検診」を実施した医療機関にて、精密検査が終了後も定期的なフォローをお願いします。(初回検診時より定期的なフォローにて多くの胃がんが発見されています)
| |
A群 |
B群 |
C群 |
D群 |
| 胃がん発生頻度/年 |
ほぼ 0 |
1,000人に1人 |
400人に1人 |
80人に1人 |
出典:三木一正 第3次対がん総合戦略研究事業 胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジーに関する研究(厚生労働省)
|
|
| Q.6 |
ぺプシノゲンとヘリコバクターピロリIgG抗体は毎年測定しないでいいのですか?
|
| A.6 |
長期観察によって、個人のペプシノゲン値はほとんど変動しないことがわかっています。またヘリコバクターピロリの持続感染は幼少期におこり、成人になってからの感染は一過性に終わることが多く、変化することは少ないため、ABCD分類は、個人において生涯において変化することが少ないのです。
しかし、ピロリ菌感染があって萎縮の進んでいないB群の方が、年齢とともに萎縮性胃炎が進んでペプシノゲン値が陽性となりC群となる、C群の方が更に萎縮が進んでD群になることがあり、これまでの調査では10年間で10%程度の方は変動するようです。
胃がん死亡の抑制効果の点からの調査ではペプシノゲン値測定から5年間は効果が持続する(測定5年以内は未受診者とくらべて胃がん死亡率が低下する)という報告もあります。以上の点から、厚生労働省三木研究班でも5年間隔での測定を推奨しています。 |
|
| Q.7 |
ペプシノゲンの値、ヘリコバクターピロリ抗体の値で、胃がんのリスクは変わりますか?
|
| A.7 |
胃粘膜萎縮が進むほど、ペプシノゲンⅠ/Ⅱ値が低下し、胃がん発がんのリスクが高まる傾向があります。また個人のペプシノゲン値の経年変化を追って、低下していった場合にがんが発見されたという報告もあります。ヘリコバクターピロリIgG抗体価についても、高い人ほど、発がんのリスクが高い傾向を認めています。
しかし内視鏡を受けない限りがんは発見されないのですから、検診の現場では、ペプシノゲン法は基準値をカットオフ値として陽性と陰性に分け、ヘリコバクターピロリに関してはIgG抗体で感染の有無を診断し、この組み合わせで胃がんリスクをABCDの4タイプに分類し、内視鏡検査を勧奨してください。 |
|
| Q.8 |
A群を内視鏡検査の対象からはずすことに問題はありませんか?
|
| A.8 |
症例からみたばあい、PG陰性、HP陰性の胃がん症例は少なからず存在しますが、少なくとも健常者を対象とするマススクリーニングの現場では、A群からの胃がん発見は極めてまれです。
そして日本人のピロリ菌感染が年々低下していることから、集団におけるA群の割合は年々増加しています。
A群を内視鏡検査の対象からはずし、リスクの高い集団に対して重点的に精査を行うことは、胃がん検診の効率化、そして医療経済的にも有意義と思われます。
A群の受診者を胃内視鏡検査の対象からはずす場合は、あくまでも「ハイリスクスクリーニングの結果からは、胃がんになる可能性のきわめて低い集団に属しているので、内視鏡精査の対象にはならない」という説明となります。A群であるから「がんはない」とは説明しないでください。
A群であっても症状がある場合は主治医の判断で医療の対象として内視鏡を実施できますし、個人の希望によって人間ドック等で内視鏡を受ける機会を妨げるものではありません。 |
|
| Q.9 |
万が一A群から胃がんが発生した場合、責任はどうなりますか?
|
| A.9 |
PG陰性、HP陰性の胃がん症例は少なからず存在することから、検診受診者のA群からの胃がん発生が絶対にないとはいえません。これはいわゆる見落としとは異なり、避けられないことです。
大腸がん症例に便潜血検査を行った場合の陽性率は70%程度であり、このことから30%の大腸がんは便潜血反応によるスクリーニングから漏れることになります。実際潜血検査陰性者に内視鏡検査を行って、大腸がんが見つかることも少なくありません。したがって大腸がんの便潜血検査は完全なものではないという、インフォームドコンセントが必要です。
同様に、胃がんハイリスク検診はあくまで胃がんのリスク診断であり、胃がんの診断ではないことを、実施主体や担当医が受診者にしっかりと説明し、理解を得ることが必要です。
「男性の乳がんはないわけではないが、男性に乳がん検診は行わないのと同じ」と説明している施設もあります。 |
|
| Q.10 |
スクリーニングでピロリ菌感染が診断された場合、除菌すべきですか?
|
| A.10 |
胃がんハイリスクスクリーニングの結果だけでは、保険診療として除菌療法を行うことはできません。内視鏡精査の結果、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断が行われた場合にのみ、除菌療法が保険適応になります。
ピロリ菌感染が胃がんのリスクであることが区民にも浸透しているため、除菌療法を希望する受診者が増えています。また除菌による胃がん予防効果、機能性胃腸症の症状軽減に関する報告も多く、自費診療での除菌は妨げません。
将来的には胃がん予防を目的としての除菌療法が保険適応になることが予想され、日本ヘリコバクター学会などが働きかけています。
いくつかの報告では、除菌による胃がん予防効果はB群では有効であり、C群、D群では除菌の胃がん抑制効果は認めませんでした。これはがんの前がん状態である萎縮性胃炎はピロリ菌によって進展するが、萎縮性変化は不可逆的な変化であることに由来する結果と判断できます。
除菌が成功した症例からも胃がんが発見されることは少なからずあり、これは除菌を行った時点で、すでにミクロの次元で胃がんが発生していたと考えられます。したがって除菌療法を行った場合にも、除菌以前のABCD分類に従って、引き続きフォローアップしていくことが必要です。 |
|
| Q.11 |
測定に食事、服薬などの影響はありませんか?
|
| A.11 |
ペプシノゲン、ヘリコバクターIgG抗体は、食事の影響はほとんど受けないので、随時測定が可能です。
服薬についてはプロトンポンプインヒビターの服用がペプシノゲン値を正常化させ、偽陰性となってしまう可能性があります。長期使用ではヘリコバクターピロリIgG抗体にも影響を与える可能性があります。
特に除菌療法を受けている場合には気をつけなくてはなりません。
慢性副鼻腔炎などで、マクロライド系抗菌剤を長期服用している場合には、ピロリ菌が除菌され、抗体価が下がっている可能性があります。
また胃切除を受けた方や、腎機能障害のある方も、血清ペプシノゲン値が胃粘膜萎縮の状態を反映しません。
胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の治療を受けていないか、ピロリ菌の除菌療法を受けたことがあるか、慢性副鼻腔炎などで長期に抗生物質の服用をしたことがないか、胃の手術を受けていないか、腎機能障害はないか、などを問診で確認しておく必要があります。 |
|
| Q.12 |
胃がんハイリスク検診対象除外者について教えてください。
|
| A.12 |
リスク判定が困難である、もしくは治療が優先される等の理由から、以下の対象除外項目に該当する方は原則検診対象除外者となります。必要な場合は区の胃がん検診(胃バリウム検査)をご紹介ください。
ただし、対象除外者であっても医師が必要と判断した場合はその限りではありません。その際は、検査の結果に影響を与える因子を十分に考慮した上で、医師の責任において胃がん発生リスクについてご説明をお願いします。
| 対象除外項目 |
除外理由 |
| 明らかな上部消化器症状があり、胃や十二指腸の疾患が強く疑われる |
保険治療の対象 |
| 食道、胃、十二指腸疾患で治療中 |
保険治療の対象 |
| 胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプ阻害剤)服用中もしくは2ヶ月前以内に服用していた |
ペプシノゲン値が高くでる |
| 胃切除後 |
ペプシノゲン値が低くでる |
| 腎不全(目安:クレアチニン値が3mg/dL以上 |
ペプシノゲン値が高くでる |
|
|
| Q.13 |
胃がんハイリスク検診を受診する3ヶ月前に医療機関で内視鏡検査を受け「異常なし」といわれている受診者の結果がC群でした。精密検査はどうすればよいでしょうか?
|
| A.13 |
この検診はあくまでも胃がん発がんリスクを知る検診ですので、精密検査の実施に当たっては検診受診者と十分話し合って決定する必要があります。胃内視鏡検査を最近受けてない場合は、精密検査が強く勧められますが、このケースのように2年に1回程度の胃内視鏡検査が勧められるC群であり、明らかに3ヶ月前に胃内視鏡にて異常なしといわれている場合は、今すぐ精密検査をする必要はないと思われます。
受診者と相談の上、一応の基準として検診日以前6ヶ月以内に内視鏡検査等を受けている場合はその結果をもって精検結果に代えることとします。検査日の欄にはその内視鏡検査日を記入して下さい。1年以内に内視鏡検査を受けていない場合には、精密検査をご勧奨ください(B群、D群についても同様です)。 |
|