ペプシノゲン法の効果と効率の評価はどのように行なわれるか

国立がんセンターがん予防・検診研究センター 濱島ちさと 

がん検診には様々な方法があるが、本当に有効なのかを見極めるのは重要な課題である。

がん検診の有効性を示すのに「発見率」がよく用いられている。しかし、「発見率」はがん検診の有効性を示す指標ではない。

なぜ、「発見率」ではいけないのか。それには、2つの理由がある。第1は、「発見率」はがん検診の対象となる集団の特性に左右されることである。胃がんの罹患数(がんになる人の数)は加齢と共に増加し、また男性が女性より高い。たとえば、60歳以上の男性を対象に検診を行えば当然「発見率」は高くなる。検診方法や技術の差もあるが、対象による胃がんの罹患数の違いの方がはるかに大きいのである。第2は、「発見率」はがん検診本来の目的を示すものではないことにある。がん検診の目的はがんを多く発見することではなく、多くの人々をがんによる死亡から救命することにある。多くのがんを発見しても、救命不能な進行がんばかりでは、がん検診の目的を達成したことにはならない。

がん検診が有効と判断するには、がん検診が行われる集団において当該がんの死亡率が減少していることを証明する必要がある。その方法として最も信頼性の高いのは無作為化臨床試験1) だが、研究を進めるのがなかなか難しい。次善の方法として症例対照研究2) があるが、複数の地域で同様の結果が証明されれば、有効性があるといえる。間接X線検査による胃癌検診は内外の5研究で有効性が支持されている。ペプシノゲン法は、平成13年度から始まった厚生労働科学21世紀医療開拓研究事業による新三木班で、群馬県と広島県で症例対照研究を進めている。

がん検診の有効性が示された上で、もう一つ重要なのは効率である。税金や保険料で賄われている医療費は有限であり、限られた資源は有効に使うことが求められる。そのためには、経済評価によりその効率を検討しなくてはならない。経済評価は諸外国でも医療サービスの導入や新薬の価格決定などに用いられ、その方法は標準化されている3)。ペプシノゲン法と従来の間接X線法の経済評価研究では、間接X線の方が費用効果のよい方法であった。しかし、ペプシノゲンと間接X線を組み合わせた2段階法は間接X線より効率はやや落ちるが、間接X線より多くの人を救命できる可能性がある。

最終的な政策決定は、有効性評価を踏まえ、こうした効率性や対象集団の特性を考慮して行われるのが望ましい。


1) ある集団に対して、検診を受けるあるいは受けない群をくじ引きで割りつけて、両者における死亡数を比較検討する方法。この方法は研究が集団に明らかに害を与える可能性がある場合には実施できず、またその効果をみるために長期間にわたる経過観察が必要となることから、莫大な費用がかかる。
2) 胃癌で死亡した人と、同時期に性・年齢・居住地などが一致する生存者を比較し、過去にさかのぼって検診の影響を比較検討する方法。過去の記録をもとに検討するので、情報が不正確になりやすい。
3) 費用と成果を共に検討する、代替案と比較するという基本条件をそろえた完全な経済評価として、費用効果分析、費用効用分析、費用便益分析がある。