ペプシノゲン法による胃癌スクリーニング
和歌山県立医科大学第二内科 一瀬雅夫
胃癌に罹った方の多くが、慢性萎縮性胃炎により、胃粘膜が強く萎縮した状態にある事が、これまで多くの研究結果から明らかにされています。すなわち、慢性萎縮性胃炎の結果生じる胃粘膜萎縮の状態は胃癌発生の危険因子の一つと考えられています。この事から、胃癌の早期発見、早期治療を目指して行われる胃癌検診では慢性萎縮性胃炎の進んだ方を、内視鏡検査(あるいは精度の高いバリウム直接X線検査)を用いて優先的にスクリーングする事が、より効果的で望ましいと考えられます。しかし、慢性萎縮性胃炎に特有な症状はないため、簡便で安価、負担の少ない慢性萎縮性胃炎の診断方法が求められていました。最近になって、胃で分泌される消化酵素“ペプシノゲン”が微量ながら血中に存在する事、さらに血中のペプシノゲン値が、胃粘膜萎縮の状態を反映するマーカーとなる事、すなわち、萎縮性胃炎の進んだ方を同定するのに役立つ事が明らかとなりました。ペプノゲン検査により、萎縮性胃炎の進んだ方を選び出し、内視鏡検査でスクリーニングを行う事で効果的に、胃癌、特に早期がんを発見する検診方法がペプシノゲン法です。この新しい胃癌検診は、現在、都市部を中心に着実に普及しつつあります。ペプシノゲン検査:
ペプシノゲンには性格が異なる2種類の酵素である、ペプシノゲンIとペプシノゲンIIが存在します。血液検査でわかる両者の値は、ほぼ胃酸分泌に相関しており、両者はおよそ3:1の比率で存在します。胃粘膜に萎縮が生じ、胃酸分泌が低下するとペプシノゲンIの値も、I/IIの比も萎縮の程度を反映して低下します。すなわち、ペプシノゲンは慢性萎縮性胃炎の進展によって生じる胃粘膜萎縮のマーカーとして貴重な情報を提供してくれます。多くの場合、ペプシノゲンIが70μg/l以下かつI/II比3.0以下の値の組み合わせが基準値として、胃検診の一次スクリーニングのカットオフに使用されています。これまでの研究結果から、この基準値以下の方は胃粘膜萎縮が進んだ胃癌ハイリスクと考えられ、内視鏡による精密検査が必要です。また、たとえその年に行われた精密検査で胃癌が発見されなくても、今後もハイリスク群であることに変わりはなく、要管理精検群として精密検査を毎年繰り返して行う対象となります。
ペプシノゲンによる胃癌検診の特徴:
ペプシノゲンによる胃癌検診には、
(1)受診者の精神的、肉体的な負担が少ない事
(2)検診費用が安く、一度に多くの受診者の検診が可能である事
(3)一般健診と同時施行が可能である事
(4)判定結果が検者の技量に左右されず客観性があり精度管理が容易である事など、血液検査によって行える本法の長所に加え、
(5)従来のX線による胃検診では発見困難な早期癌が多く検出される事
(6)胃癌発生の危険が高い個人の同定が可能であり、陽性者を効率良く管理出来る事など、多くのすぐれた点が備わっています。
(2)検診費用が安く、一度に多くの受診者の検診が可能である事
(3)一般健診と同時施行が可能である事
(4)判定結果が検者の技量に左右されず客観性があり精度管理が容易である事など、血液検査によって行える本法の長所に加え、
(5)従来のX線による胃検診では発見困難な早期癌が多く検出される事
(6)胃癌発生の危険が高い個人の同定が可能であり、陽性者を効率良く管理出来る事など、多くのすぐれた点が備わっています。
その反面、
1)ペプシノゲン検査が、胃粘膜萎縮を検出する検査であり、胃癌を直接検出する検査ではないために、ペプシノゲン検査では見逃される胃癌が存在する事(ペプシノゲン法陰性胃がんの項参照)
2)検査そのものの意義が検診担当者、受診者側に未だ充分認識されておらず、陽性者の精密検査受診率や要管理精検者の継続受診率が低い事など克服すべき問題点もあります。
実施する場合、以上の諸点をおさえると同時に、受診者にもこの新しい検診システムを理解して頂ける様に啓蒙しつつ慎重に運用する事が(ペプシノゲン法の具体的実施方法の項参照)、精度と費用効果に優れ、簡便で安全な胃癌スクリーニングとしての本法の特徴を発揮し、充分な検診効果を挙げて行く上で大切です。
